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│人間やりたい記│
人間やりたい記
2.11昼
(前回の続き)
“PLAYER”にメン募が載ってから、一週間もするといくつか連絡が来た。“当方天才。ストーブをぶったた いて、破壊して創った曲がある。是非一緒に〜”とか“ノイズ”って言やあ聞こえは良いけど、ただの“雑 音”が延々と録音されたテープが送られて来たりと、なんか違うだろ?ってのがほとんどだった。今考える と、ちょっと募集文句に問題ありだよな。そんな中、解り易く“ギター希望、ロック好き”みたいなヤツが いたんだ。つーか、まとも?な感じのって、そいつぐらいだったんだけどさ。歳も一緒で、なにげなく住所 を見ると、なんと我家から歩いて10分もしない所なんだ。なんか巡り合わせだ〜って、早速電話してさ、 その日のうちに会ったの覚えてるな。夜、その頃桜上水で有名だった和菓子の“はまや”??後に潰れ現在 パチンコ屋、で待ち合わせしてね。ワクワクして待ってると、「南君?」って背の高い、カクカクした顔の ヤツが声かけてきた。名前は忘れちゃったけど、連絡くれたギター。初めて会ったのに、近所で待ち合わせ したせいか、なんか旧友に再会したような気分だったな。「どうしようか?飲みにでも行く?」って俺。そ したら、そいつが「それだったらウチで飲まない?」みたいな事になって、即決。“はまや”の向かい の“大和屋”??こちらは着実に売り上げを伸ばし、現在2度目の改装工事中、で酒だのつまみだのを買い こむと、知り尽くした桜上水、出張所近くのヤツの家に行ったんだ。まあ飲んだ。楽しくて楽しくて。そい つがツェッペリンフリークでさ、1stから順にレコードかけては、こまごまと説明してくれるんだ。曲のこ と、メンバーのこと、ギターのこと…俺もその頃はまだちょっとしかカジッて無かったんだけどストーンズ とか熱く語ってさ。飲んで話して散々酔って、夜中になって、2人でギター弾いてさ。こんな曲がある、こ んな歌詞があるってね。もう楽しくて楽しくて、バンド組みたい!って心底思った。
よく夢を観た。ヤツとステージに上がってる姿が浮かんだ。代々木体育館??その1年ばかり前にブルース スプリングスティーンを観に行って感動した場所。あふれんばかりに客がいて、皆汗まみれ、力の限り腕を 振り上げている。ヤツが俺の作った曲のイントロをかき鳴らす、強烈なリズムが吹き荒れる。俺はステージ 狭しと走り回り、喉も無くなれと歌い続ける。終わりなき、絶対なる夢。悪い予感のカケラも無かった。
結局そいつとはバンドは組めなかった。2人で飲んじゃ曲作ったり、音楽聴きまくったり、しばらくベッタ リ一緒にいたのは覚えてるんだけど、何故か終わっちゃった。なんでだったか、そこだけポッカリ穴が開い てて、どんなに思い出そうとしても出てこないんだよね。家が近すぎたのも、なにかと2人で完結しちゃっ て、バンドまで発展出来なかった原因の一つだったかもな。ただこの出会いが俺に与えてくれたモノは大き かった。それは、曲の作り方だったり、ツェッペリンを始めとする多くの音楽だったり、なによりバンドに 対する思いを熱くぶつけ合えた事。「ああ、本気でバンドやれるな」ってこの時確信したし、これ以来、も ちろん今もバンドをやって行く事、追求して行く事に一点の曇りも無い。ただ、ずっとやってると知らず知 らずうちに知恵がつく。経験は素晴らしい財産だとは思うけれど、時々直情であることの潔さ、大切さを曇 らせてしまう。なんだか最近、自分が“ズルイなあ”って感じられた時、俺はその時の臭いを探すんだ。2 人でギターを朝まで弾いた、あの感じ。初期衝動に満ち溢れた瞬間を。
もともとブログで初めてスタジオに入ったハナシでもしようと思ったら、なんか思いもよらず長くなった。 そろそろ〆ます。スタジオはね、この一件があった直後にボーカルを募集していたバンドに加入した時に初 めて入った。単純にバンド??でっかい音に包まれて歌った最初だったから、それなりに感動もしたし楽し かったけれど、でも、そのバンドにはヤツみたいな“熱”を持ったヤツが一人もいなかった。少なくとも俺 には、音を出してるだけ、そこにエネルギーの放射はまるで感じられなかったんで、すぐに辞めちゃった。 バンド、ロックは技量じゃ無いよね、それは時間をかけて練習すればどうとでもなるから。どうにもならな い“熱”、それを蒸留させて沸騰させて一気に放射出来るエネルギーを持ったヤツ。そんなヤツ等がしのぎ をけずり、やがてベクトルを同じくした時にロックバンドって呼べるシロモノに成るんだ。そんなバンド観 をおぼろげながら抱き始めた頃のハナシ。
南 謙一
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