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人間やりたい記

人間やりたい記
9.23早暁

小学生の時発見した感覚――その時は、ふと気づいたら家の近所を歩いてたんだけど、なんか変な感じなんだ。で、注意して辺りを見渡してみると、他に人が全然いないでしょ、ちょっと前に塞がれちゃったはずのどぶ川があるでしょ、音が無いでしょ――こりゃあおかしいぞって。でもそれより何より空気。フワリフワリと僕を包んでた、あの普段と違う、へんてこな空気の感覚。僕はなんだか急に怖くなってきちゃって、ママー、ママー、って叫びながら走ったんだ。近所だったから家に帰る方角は分かってるんだけど、全然帰れる気がしなくてさあ。どんどんあせる。そしたら今度は足が蛸みたいに、ぐにゃぐにゃにもつれちゃって、もうママー、ママー、ママーって、馬鹿みたく泣いちゃって。でもどうにもならない。帰りたい帰りたい帰りたいよー、ママー、ママー、ママー
――――ドボンッ
ベッドの中?気がつくとそこはいつもと何も変わらない2段ベッドの中で、ちょっとだけ混乱してたけど、下覗いたら弟が寝てて、その時母親に聞いたのか、自然と理解したのか覚えてないんだけど、とにかくあれは夢、夢、夢…だったんだって。小学生の時発見した感覚。それ以来、楽しい夢の時は自然に覚めるまで放っておくんだけど、早く抜け出したいような嫌な夢の時は、なるべく高い所から真逆さま、飛び込むようにしてるんだ。実際、あの時どぶ川に飛び込んでからとゆうもの、ありとあらゆる所から試して来たけど、百発百中、夢から抜け出して来たからね。例えば団地の屋上、柿の木、洗面台、ベランダ、非常階段、ホテルのフロント、ギターアンプ、楽屋の机、ほんのささいな段差、絶壁、瓦屋根、バーカウンター、電信柱、ロッキングチェアー、ベンツ、郵便ポスト、東京タワー、どぶ川、どぶ川、どぶ川、どぶ川……

同じシチュエーションの夢を何度も見る。自分が何処かの国のスパイで、銃を持った大勢の兵隊に追われる夢。薄暗い山林を必死で逃げてると見覚えのある山道に出る。ある時は見覚えのある墓地に出る。小さな飛行場に出る…実際に行ったことのある場所なのか、テレビや映画でふと観た場所に迷い込んだのか、知ってるような気がしてるだけなのか。物凄く思い出したいんだけど、絶対に出てこない。脳の悪戯。
6畳程の四角い部屋にも何度か招待された。俺は入り口に立って部屋の中を見渡している。部屋中がぼんやりと一面、シャンデリア的な装飾品で覆われており、突き当たりにあるヨーロピアン調の、小さいけれどどっしりとした鏡台が印象的だ。すぐ右手に窓があって白いレースのカーテンが強い風に揺れている。大きなベッドと絨毯は濃い紫のベルベットな感じで、優しくも気高い、なんとも言えぬオーラに溢れてる。そんな部屋に時々招かれて、なんとも自然体で俺は部屋を眺め続ける。意味?俺の操りきれない脳だけが知っている夢の意味…がむしゃらに儚い、脳の悪戯。
夢を見るのが嫌な時は決まって調子の悪い時だな。日常生活に疲れきっちゃってるから、とにかくなんも考えずにぐっすり眠りたい…みたいな。気持ちに余裕があって好調な時は、夢を見るのが楽しい。スパイになれたり、武士になって切腹を迫られたり、巨大ロボット熊に食われたり(笑)…ありえないような事が起きるからね。日曜は久しぶりの“闘魂”。月末からはレコーディング、66NITE、弾き叫び会…ってイベント続き。9月頭はもういっぱいいっぱいでひどかったけど、やっと来年への見通しも立ち、今、夢を見るのが楽しい。いろんなパワーが漲ってきた。自分の純粋な部分をしっかり握り締めて、今回ばかりはこの“力”を大爆発させよう。

南 謙一 

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